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エンジムシ(コチニールカイガラムシ)について

 
エンジムシとは、ウチワサボテンに寄生するカイガラムシのことです。

エンジムシのメスの成虫は、体長が3ミリほどでオスはメスの約半分しかありません。

どちらかと言うと、カイガラムシは大害虫の部類に入るのではないでしょうか。
でも、悪評があるにもかかわらず、栽培する農家の人もいるんです。
美しい赤色色素のカルミンという色素は、このエンジムシを乾燥させて砕いたメスから採ります。

メキシコのオアハカ州にあたる地域に住んでいた古代ミステク族の時代から染料として使われていたようです。
スペイン人の征服者たちは、その深紅の色に魅せられ、その後多くのヨーロッパ人がこの自然の染料の鮮やかに色合いをとても好むようになったようです。

19世紀半ばまでには、合成着色料が天然着色料に取って代わり始めました。
化学合成された色のほうが生産しやすく、安上がりで、発色が優れていたからです。

短期間の間に、食品、医薬品、化粧品の着色料として合成着色料が占めるようになりましたが、その使用が増えるに連れて、安全面での心配がでてきました。

70年代の研究で、一部の合成着色料に発がん性の疑いのあることが指摘され、健康に害を与えかねないと言うことを知り、それにつれて天然着色料が注目を浴びてきました。
ペルーでは、現在世界のエンジムシの約85%を生産しているとのことです。

エンジムシのカルミンの生産はどのようにするのでしょうか。
エンジムシは、ウチワサボテンの茎で生涯を送りますが、粉末状の蝋のような物質を分泌して捕食動物から身を守ります。

その綿毛のような物質は、エンジムシを包み、その住処となりますが、その分採集の時期には見つけやすくなります。

カルミン酸を多く含むのは、卵を産む前のエンジムシですから、それを採取することは特別の注意を払うことでしょう。

アンデス山脈では,7ヶ月ほどの間に採集を3回ほど行うようです。
硬いブラシでこすり落とすか、鈍くなった刃物でこそげ落とし乾燥、消毒、粉砕をへて粉末になったこのムシを、アンモニアか炭酸ナトリウムの溶液で処理します。
カスを漉し取り、精製したカルミン液体ができます。
紫系を出すために、石灰を加えたりもします。

染色材料としては、乾燥品、精製した液体として販売されています。
着色料としては、丹念に検査され、研究に研究を重ねているわけですから、安心できることでしょう。

着色料や染料としてあの鮮やかな深紅の色はとても魅力的ですが、エンジムシから作った化粧品をつけると思うと、ムシが苦手な方は躊躇してしまうかもしれませんね。
染色するにしても、乾燥ムシを擂りながら生きているエンジムシを想像してしまうこともあるかもしれませんね。
 

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