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布を染めあげるまでについて

 
一枚の布を染め上げるまでには、色々な工程をしますが、その時々に応じて変化や特長があったり、困ったり悩んだりすることもあり、それによって増し加わる喜びや楽しみもあります。


布を仕入れる

布を購入するときは、やはりサンプルを検討します。
でも、サンプル生地が小さいために全体的にどのように織られているのかがよくわかりません。

紡績布の場合は、精錬済みのものと未精錬のもの、晒しのものと未晒しのものと色々あります。
手紡ぎ手織りのものは、未精錬のものが殆どで、たまに精錬済みのものもあります。

業者が精錬したものは、大量に精錬するために精錬不足のものが多く、さらに自分で精錬しなければなりません。
その状態によっては、1回の精錬ではなく、2回精錬することもあります。
また、その精錬の段階で、染めに耐えられない、つまり疲れる生地であるものもあります。
そういう場合の手紡ぎ手織りの生地は、染色せずに、シーツやタオル、テーブルクロス、部屋着といったものに利用するか押入れの奥で眠ることになります。

また、精錬後、数回の染色に耐えられない生地も出てきます。
藍染めなどの場合は、10数回から30数回も染色するわけですから、2.3回染色したら疲れる生地では困ります。
さらに、服などに仕立てた場合は、何十回も洗うわけですから、洗ったらよれよれでは困りますよね。
ですから、基材屋さんから仕入れた生地は、いつも同じであるとは限りません。

多少の風合いの違いは、手紡ぎ手織りならではのことですし、またそれに味わいがあるのですが...
全く、初めて取引する業者とか始めて手に入れる生地の時には、特に、手にしてから精錬し、染色工程の段階で判断するわけですから、緊張と不安があります。

糸と織り見本を提供して織りを依頼することもありますが、それでもなかなか思うようにならないことが多いのです。
自分が機織りし、技術指導をすれば別なのかもしれませんが、こちらの意図が上手く伝わらないこともしばしばです。
今のところ数社の基材屋さんから手に入れる生地の当たりはずれを覚悟しての染となります。
染色経験の少ない方やアドバイスを受けられる状態の人は、色々と相談してから生地を購入した方が無難かもしれません。
でも、実際は自分で試して生地がどのような状態になるのか試みる方が勉強になるでしょう。



綿布を精練する


紡績布は、ほとんど精錬済みで販売されていますが、精錬済みのものでも、必ず購入後は、中性洗剤で洗い、よく濯ぎます。
手紡ぎ手織りのもので精錬済みのものは、必ず自分でさらに精錬した方がよいです。
業者が精錬する場合は、まとめて大量に精錬するために、きれいに精錬されておらず、精錬不足のものがほとんどだからです。
その状態によっては、1回ないしは2回精錬する必要があります。
精錬後の生地はかなり縮みます。
紡績布でも、手紡ぎ手織り布でも縮みますが、その縮み分の割合は、2〜8%位の巾がありますが、アフリカ綿を精錬した時は、7〜11%の間で縮んだことありました。
ほとんど手紡ぎ手織りの生地を使用していますが、同じ定番の織っている布でもその紡ぎ手や織り子によっても違いますし、さらにその年に収穫した綿によっても違います。
その生地により、毎回い違うこともあるので、縮み分の計算がしづらいこともあります。
また、だんだん紡ぐ技術が向上してきますので、年々紡ぐ糸が細くなり、織りもきれいになってきます。
熟練した人が手紡ぎ手織りした布は、糸が抜けていたり、切れていたり、筋が出すぎていたりすることもなく、まるで機械で織り上げたような布に仕上がっています。
しかし、紡績布とは風合いがぜんぜん違い、まるで空気を含んだように柔らかく織りあがっています。
精錬後、お湯でよく濯ぎ、さらに水でよく濯いで乾燥させておきます。
精錬不足だと、きれいに染まりませんので注意が必要です。



藍で布を染める


精練した布を染色する時は、染め始める前に水につけて十分水分を含ませます。
藍染めするときは、一番最初は何分染めていても何十分染めていてもあまり変わりません。
でも2回目の染色時間は、一番最初に染色した時間より短くして染めます。
そして、3回、4回と染色していきます。
普通は12.3回くらいが定番でしょう。
物によっては、15.16回、上物で24回くらい、あるいはさらに30回以上も染めることもあります。
発色させる場合は、自然発色の空気酸化、あるいは、水酸化することもあります。
最近は、手早く発色させるために発色剤も取り扱われています。
通常の空気酸化させるやり方は、まず表面が酸化し色がだんだん発色し青になってきます。
しかし、繊維の奥のほうは、なかなか発色しません。
それを繰り返し染色しますが、同じ回数を染色したとしても、繊維の表面の顔料化した色素を洗い落とすと、色はかなり落ちてしまいますが、手間隙かけて根気よく染めることを繰り返す、ただそれだけです。
水で酸化させると少し暗い感じの藍色戸なりますし,染める人によっても藍の色が違います。
不思議なことですが、染め方や発色のさせ方の違い、同じように染色しても人が変わると微妙に藍色が違うのです。
染め上げた藍染め布は、数ヶ月あるいはさらに長期間、暗いところで寝せておきます。
その間に藍の色素は奥へ奥へと入り込んでいきます。
寝せた藍染め布は、その後水で流しっぱなしにしながら水で濯ぎアクを抜きます。
さらに、その布を藍返しといって、藍染めします。
その後、水でよく濯ぎ、乾燥させます。
時には、染め上げて寝せていた布の色が少し薄くなっていることもあります。
表面の顔料化した色素をそーピング剤を使って湯でよく揉み洗いして、水で濯ぎ、酢酸で中和させ、その後さらに水洗いをして乾燥させるか、さらに染め重ねることもあります。
その時の状態によっても、仕上げ方法が違うこともあります。






 

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