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染色の前処理について

 
染色専門の布や糸を購入するとき、糊抜き精錬済みとか未精錬とか説明書きが書いてあると思います。
布や糸を、何も処理しないでそのまま染めた時、上手く染まることもあるけど、染料が浸透しなかったり、濃い色に染まらなかったり、ムラに染まったりしたことがあるかもしれません。
必要な前処理がしてなかったり、あるいは、仕上げ剤として糊や薬剤処理してあるものもあります。

染色前に必ず前処理しなければなりませんが、繊維の種類や布や糸などの形態によりこれは異なります。
見た目で判別することはできませんので、イソジンテストをして、必要な前処理方法を決めます。

前処理するのは、かなりの時間、染色工程と同等、あるいはそれ以上にかかる場合があります。
手紡ぎ手織りの貴重な織物など、それを直接手に入れた場合はほとんど未精錬です。
この場合は、かなりの不純物や糊、汚れなどが付着していますので、自分で糊抜き、精錬をしなければなりません。
こだわりをもった基材の場合を除いて、染色材料店にて糊抜き、精錬済みのものを手に入れたほうが楽なことは確かで、なるべくならそのまま染められる布や糸を選んだほうがよいかもしれません。

精錬はとても大事な作業で、手抜きせず、しっかりと処理しないといけません。
見た目ではわからないのですが、処理が不十分ですと、染色して初めて濃度が低下したり、染めムラとなったりと、その時になって始めてわかるのです。

糊抜き、精錬済みのものでも、精錬不足があったり一応人の手に触れているわけですから、中性洗剤で洗うようにしましょう。



 



以下は、各素材別前処理方法です。



羊毛の前処理方法
刈り取ったばかりの原毛には、グリースと呼ばれる油脂分やスイントと呼ばれる汗などの水溶性不純物のほか、土、糞、植物質などが付着しており、大変汚れています。
これらを洗い落とす工程を染毛といいます。
工業的には、機械を使い、5槽前後くらいの洗浄槽で順番に液を換えながら連続的に処理するのですが、個人でする場合は、設備がない分薬剤でカバーします。
また、個人で処理する場合は、薬剤などのコストより、原毛をいかにフェルト化しないようにするかが大切で,中性洗剤で洗浄します。

防縮処理する場合は
工業的には、フェルト化しないよう工夫した機械が使われていますが、個人で染色する場合は、ステンレスのボールや寸銅鍋に入れ加熱処理します。
染めムラをなくすためには、羊毛をよく動かさなくてはなりませんが、そうするとフェルト化が進みます。
普通は、ある程度の染めムラは、「手作り」の味ではないかとみなし、できるだけ羊毛を動かないように染色されています。
工業的には多くの方法が実用化されていますが、個人でもできる防縮処理として染色材料店にて薬剤を取り扱っていますので、問い合わせてみてください。

絹の前処理方法
絹の糸や布は、生糸を精練した練り絹の状態で販売されていることが多く、普通は特に前処理せずそのまま染色することができます。
しかし、最近は製造問屋直に仕入れることも可能となり、糸が生糸で販売されていることもありますが、白練り価格も表記されていることがほとんどだと思います。
この練り具合は、経験者でないとちょっとその加減が難しいでしょう。
糸を仕入れる場合は、練り依頼も一緒にしたほうがよいかもしれません。

市販されている練り絹の状態のものでも、まれにその生地が原因で染めムラになることがあります。
これは、精錬の不均一、あるいは、精錬後の洗浄が不十分のために起こります。
練り絹のものでも、念のためにタンパク分解酵素液に浸け、洗浄剤で洗うとよいでしょう。

木綿や麻の前処理方法
染色用の木綿や麻は、そのまますぐ染められるものから、糊抜き、精錬不十分なもの、全く処理せずもともと繊維に含まれる油分や紡績、製織のときに使用された油とか糊などが付着したものまで色々あります。
ただ、洗うだけでは油汚れや糊は落とすことはできません。
工業的には、糊抜き精錬漂白など1工程で済ませてしまいます。
しかし、大量にまとめて行いますので、糊抜き、精錬済みのものを購入したとしても、もう一度精錬したほうが無難なことが多くあります。

個人的に糊抜き、精錬するためには、まず、イソジンテスト、をしてみるとよいです。
糊が付着している場合は、でんぷん分解酵素や酸化剤などで分解して除去します。

精錬は、木綿や麻にもともと含まれている色素、ガム質、蝋質を落とすことと、紡績、製織工程で付着した汚れや使用した助剤を落とすことが目的で行います。
もともと含まれている色素やガム質などを落とすには、苛性ソーダのような強アルカリが必要で、紡績、製織工程で付着した汚れなどを落とすには強い洗浄剤が必要となります。

また、精錬で最も注意しなければならないことは、洗浄不良です。
精錬後水洗いが不十分だと表面上はきれいでも内部に汚れや洗剤が残っており、布を乾かした場合その表面上に浮き出してきて染めムラの原因ともなります。
精錬後は、長く濯ぎ洗いするより、脱水と湯に浸けることを繰り返し行った方が効果があります。
一度の精錬では除去できない時は、これを液を新しくして、2〜3回精錬します。

精錬するとかなり白くはなりますが、生成り色です。
さらに、白くするには、繊維に残っている着色成分を分解除去するために、酸化剤による漂白をします。
酸化剤は、塩素系や過酸化水素系の薬品が使われます。

繰り返し漂白しても真っ白にはなりません。
真っ白にするには、蛍光染料で染色します。

シルケット加工とは、綿の糸や布に縮まないように引っ張りながら苛性ソーダの濃い液(20〜25%)に浸けたあと、水洗いすると、絹のような光沢や、染色性向上、吸湿性向上、サイズの安定化などの効果が得られるのですが、引っ張りながら作業するので、個人的には少し無理もあり危険でしょう。





 

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